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圧縮ばね及び初張力が無い引張ばねの計算

XS1のキャブレターのばね関連で必要になったので作りました。自分用の覚えなので他人には使いにくいと思います。すいません。

出典はJISのB 2704その物です。

spring.xls


自分用の覚えを兼ねて簡単な解説です。


コイルバネの性質(≒バネ定数)を決めるパラメータとしては大きく「材料の横弾性係数」「材料の直径」「コイル平均径」「有効巻数」「自由長」等が有ります。

バネ定数はバネの硬さ(機械系の人なら剛さ(こわさ)と言った方が馴染みが良いかも)を表す数値です。例として「そのバネを1mm縮めるのに何Nの力が必要であるか」で表します。この数値が大きいほど硬いバネとなります。普通は伸ばすときにも縮めるときも同じバネ定数です。

「N」は力の単位で「ニュートン」と読みます。「力の単位はkgやろ」と思う人は大幅に間違っては居ませんが、正確では有りません。計量法にも違反しますし、将来月で暮らすような時代が来たときに戸惑う事になります(笑)。

理屈は解るけど感覚が付いていかない・・・と言う場合は、地球上で質量100g(0.1kg)のリンゴ1個を持ったとき、地球が下向きに引っ張る力が約1Nと覚えておきましょう。Nの正しい定義とは違うので人には言わないように(^^)。


「材料の横弾性係数」は、物質の伸び縮み方向の変形のしにくさを表している「縦弾性係数」や「ヤング率」と違って、物質のねじり方向の変形のしにくさを表す数値です。

一瞬、トーションバースプリングじゃ無いのに何故ねじり??と思えますが、コイルバネをよく見ると一番弱くて強度や変形の度合いに支配力を持っているのは力の加わった場所から少し離れた所のねじりだからです。

横弾性係数の値は縦弾性係数と同じ様に鉄系なら大きな差は有りません。軟鋼でもクロモリでもほとんど同じです。永久変形するときの加重が違うだけです。ステンレス系になると1割ほど柔らかくなります。

バネ定数は横弾性係数の値に比例します。


「材料の直径」は素線の直径です。何ミリの線を巻いて作るかと言う部分です。

大量生産なら好きな直径が選べるかもしれませんが、自作の場合は入手可能なピアノ線、硬鋼線の太さから逆算する事になるかもしれません。

この太さはバネ定数に大きな影響力を持っていて、バネ定数は材料の直径の4乗に比例します。直径が1割太くなるとバネ定数は46%も増加するので注意が必要です。


「コイル平均径」はコイル部分の中心の直径です。「内径と外径を足して2で割った値」でも有りますし、「外径から材料の直径を1回引いた値」でも有ります。

バネ定数とコイル平均径の関係は一見意外です。一般的な言い方で書けば「大きなコイルほど柔らかいコイル」となります。しかも加速度的に。

梁の撓みやクランク状の棒をねじったときの変形を思えば解ることなのですが、もう少し硬いバネにしたいときに、バネを小さくするのは何となく違和感を感じてしまうかもしれません。

バネ定数はコイル平均径の3乗に逆比例します。


「有効巻数」は簡単に言うと何巻のバネかと言うことです。10巻のバネは5巻のバネを2個積み重ねた物と考えると理解しやすいのですが、巻数が増えれば同じ力でも変形が増えます。同じ事をバネ定数の立場で言い換えれば、巻数が増えればバネ定数は小さくなります。

バネ定数は「有効巻数」に逆比例します


「自由長」は力が加わって居ないときのバネの長さです。「有効巻数」が先に規定されていれば「ピッチ」の形でも表す事が出来ます。

意外ですが自由長はバネ定数に影響を与えません。いやおかしい「長いバネの方が縮めるのに力が要るじゃないか・・・」と言う気分になります。しかしそれは全体の力が必要なだけで単位長さを変化させる為の力は同じになります。

オートバイのサスペンション等で議論になるスプリングのイニシャル調整や、CVキャブのスプリング等が好例です。「今の力や位置」を弄りたいのか「変化のレート」を弄りたいのかを区別しないといけません。


以上は全て理想的な状態での理論値です。1ピッチでコイル径ほども進むバネや、極端に素線径が太いバネなどは計算から大幅に外れてきます。

とは言っても、数割の調整なのか数倍の調整なのかを見極めておくことは有効です。部品の出ない旧車を修理したり他の機械類を改造する場合、各種のバネを闇雲に試してみるのと概略の計算をしておくのでは効率が違います。


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