RIGHT STUFF, Inc.

Right Stuff Wrong Stuff


XS650(XS1B) ウインカーリレー

純正の巨大なコンデンサとリレーのLを組み合わせたタイプを修理して使っていましたが、再度調子が悪くなって開けてみるとコンデンサのリード線の辺りから液が漏れていました。この辺が潮時と入れ替える事にしました。


ここにはウインカーリレーの回路図があります。

何か使えそうな部品が無いかと部品箱を漁ってみると、555の2回路入りで556と言うヤツと、発振回路付きのリプルカウンタで4060と4521が有りました。

555の回路は色々と紹介されている事や556では1回路が余ってしまう事、「バイクは古いが点滅周期は水晶発振でppmオーダーの安定度」と言う謳い文句の方がカッコイイ気がして、何となくクリスタルとリプルカウンタ方式を採用しました。。。

これが壊れても最低限走ることは出来ますので回路は適当です(笑)。あまり深い検証はせずに見つけ次第部品を付けて行くと言った感じでくみ上げました。

出力だけはC-MOSのICにバイポーラトランジスタは無かろう・・・と思ってFETを使いましたけど。

参考までに道路運送車両の保安基準の第四十一条の3の一には 「方向指示器は、毎分六十回以上百二十回以下の一定の周期で点滅するものであること。」と有ります。手持ちのクリスタルでこの条件を満たすのは3.5795MHzだったのでこれを採用しています。ちょっと点滅が速い気もしますが。


ここには基板上の部品の画像があります。

秋月のエポキシ基板上にくみ上げて試験し、不要部分を鋸で切断して完成です。リード線を半田付けして要所要所を接着剤で固定します。


ここにはケースに組み込み中の画像があります。

純正と同一サイズの円筒をアルミ板で作り、その中に基板を挿入して一旦接着剤で仮固定します。


ここには完成したウインカーリレーの画像があります。

隙間に仕事のあまりの樹脂を充填してできあがりです。


問題なく使って居ましたが、ちょっと問題が出てきました。

長時間使った後の熱なのかノイズなのか良く解りませんが、「カッチン カッチン カッチン カッチン」では無くて「カッチン カッチン カチッカチッ カッチン」となることが有るのです。ごくごくたまに。

ちょっと適当に作りすぎたのかもしれません。今のままでも実用上の問題は有りませんが気になります。もう少し回路や実装を練り直して、完成版を作る必要が出てきました。


その後実走行で感じたことは、自らの熱による暴走ではないかと言うことです。どうも走行時間に応じてエラーが出始めるような感じがしています。エンジンの熱なら走行状態によって差が出そうなものです。

今回の回路は機械的な強度だけを考えて樹脂で封入してしまいました。リプルカウンタはフリップフロップの固まりです。いくらC-MOSと言えど消費電力は無視できません。対策版は放熱に気をつけて作り直してみます。


改良型

熱によると思われる不安定さの改善と、ウインカーを使っていないときも内部でカチカチやっているのが気になったので改良型を作ってみました。


ここには改良型の基本回路図が有ります。

ウインカースイッチを入れたときだけ、内部のICが動作するように工夫した回路の基本部分です。

最初はダイオードと大容量コンデンサを使ってICを駆動する事を考えていました。しかしウインカーバルブをLEDに変えたりして、消費電流が激変した場合の対応が難しい様に思えたので案の段階で却下しました。

次に上図と良く似ていますが、ICのプラス側にPNPトランジスタを1個のみ使った回路を実験しました。これは巧く動いたのですが、メインのオンオフにPチャンネルFETを使うにしてもPNPトランジスタを使うにしても、コントロール回路の電源をプラス側で入り切りするのが気に入りませんでした。

最終案がPNPとNPNのトランジスタを使った案です。ウインカースイッチを入れるとリレーのOUT端子は0Vに近くなります。D2を経由してC1には電荷が蓄えられて、その電圧はQ3のベース電圧を低くして最終的にQ2がオンします。

Q2がオンするとQ2のコレクタ電流がQ3のベースを駆動し、Q3がオンしてコントロール回路のICが動作します。ICの信号によりメインのトランジスタQ1がオンオフを繰り返します。

Q1がオンの時はリレーの出力端子はバッテリー電圧まで上昇します。しかしD2の働きでC1から電流が流れる事は有りません。C1は徐々に電圧を下げながら、次の点滅サイクルまでQ2のベース電流を流し続けます。

以上の繰り返しになります。従ってQ2のベース電流に対して十分に大きなC1を用意しておかないと、1-2Hzの点滅周期の間でC1が放電しきってしまいます。

この例のようにC1を100μFにした場合、Q2のベース抵抗は10kΩで3-4秒はOKです。ベース抵抗を100kΩにしてC1を10-47μFにする方が良いかもしれませんが、手元のデジタルトランジスタを使ったのでこのような値になりました。

参考までにDTA114やDTC114のベース及びエミッタ側の抵抗は全て10kΩです。一般的な2SA1015や2SC1815に10kΩの抵抗を組み合わせても同じ事が出来ます。

D2は実験では1588を使いました。組み込み用は1Aクラスと思われるスペック不明なダイオードを使いました。この程度ならなんでも良いような気がします。保証はしませんが(笑)。


ここには改良型の回路図があります。

改良型の全回路図です。当然のことですが、デジタルICのメインの電源を接続する必要が有ります。4521の例では8番ピンをマイナスに、16番ピンをプラスに接続します。

要は、5番と16番をプラスに、3番と8番と9番をマイナスに接続する事を意味します。デジタル回路図の慣用みたいでライブラリもこれらの端子が省いて有りますが、元が機械屋の私にとっては解りにくいしきたりに思えます。

4521の部分をよく見かける555に変更したり、トランジスタで発信させても同じ様な事が出来るはずです。たぶん(笑)。

動作的には4Vくらいから動作しました。XS1の灯火類は12V仕様なので4Vでは点滅が見えませんが、電流計ではきちんとオンオフを繰り返しています。8Vくらいまで電圧を上げれば、お巡りさんに言い訳が出来るくらいの点滅を始めます。この状態でも水晶による正確な1.71Hzの周期を守って居るのはちょっと嬉しかったりします(^^)。


ここには基板の画像があります。

組み込み前の基板です。最終的には寸法の制約と放熱の問題から、FETは切り離してアルミケースにねじ止めするように変更しました。

FETは手持ちの関係から2SJ113を使っています。このFETはオン抵抗が0.25Ω程度有ります。5A流すと1.25Vの電圧低下。電力では6.25Wにもなります。半分周期なので実際の発熱は3.13Wですが小さな値では有りません。手で触ると十分熱いと感じる熱量です。

もし新たに部品を集めて製作をする場合は、もう少しオン抵抗の小さなFETか、Vce(sat)電圧の低いPNPトランジスタを選んだ方が良いかと思います。

たとえば秋月で200円で売っている2SJ554ならオン抵抗が0.028Ωなので、5A時の発熱は0.35Wへ激減します。


この場合FETのゲート抵抗は要らんやろと思って意識的に省いてますが、ゲートとソース間に10k-100kくらいの抵抗を入れておいた方が良かったですね。私のは既に樹脂封入してしまったので追加できませんが・・・

しかも、回路図を見ているとゲートとソースを逆向きに書いているのを発見!。こりゃいかん。早急に直しますけど、それまでは内蔵ダイオードとに電流が流れない方向に置き換えて見てください。ごめんなさい。

2006年09月04日、上記2件を修正しました。


このボタンは、目次に戻るリンクです。