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XS650(XS1B) FETレギュレータの製作

チリル式も風情があって?良いけれど、現在の法規や交通事情を考えると内部を一新してしまおうと。


ここにはレギュレータの回路図があります。

GX250の例に倣って回路を考えます。GX250はフィールドコイルのマイナス側制御でしたがXS1はプラス側制御です。そのために回路も素子もプラスマイナスを反転した形になっています。

手持ちのFETで使えそうなのが2SJ113でした。特に大きな意味はありません。50Vで10Aくらいなら使えるのではないでしょうか。12Vのツェナーが1Wタイプだったので、GX250の時よりも少しだけ電流を増やしてみました。

GX250で対策したスイッチングの速度ですが、XS1に必要かどうかは検証していません。でも面倒なのでGX250そのままの定数で作ることにしました。


ここには仮組で試験中の画像があります。

仮組で試験します。14.5V近辺で切り替わるようにR3とR4を選択します。


ここには内部の画像があります。

見た目は昔のままを維持したかったので、中身だけを交換することにしました。この後車上で簡単な試験をして、最終的にはホットメルト系の接着剤で固定します。

ついでなので腐食したコネクタの端子や、硬化してしまった保護チューブなども交換しておきます。


ここには新旧の比較画像があります。

新旧の比較画像です。右がXS1のチリル式。左がTX650から部品を取ってきて内部を入れ替えたFETレギュレータです。外から見ただけじゃ違いはわかりません。


単体で14.5Vに調整したレギュレータですが、実際に装着してバッテリー電圧を見るとヘッドライトOFFで14.7V程度。ヘッドライトONで15.0V程度に制御されています。1000rpmでは14Vを下回っていますが、1200rpmも回せば14.7Vが出ています。レクチファイヤを高効率化すれば1000rpmでも14.7Vが得られるかもしれません。

15.0Vも出るのはレギュレータの誤差ではなくて途中の配線の電圧降下の影響です。レギュレータのセンス線(茶色)が他の電流が流れる経路の途中から取り出して有るためです。そのためにこれを補正するためにレギュレータの電圧を下げることは本筋ではなく、本来なら配線の電圧降下を少なくしたり、センス線をバッテリー端子の近くに接続し直すべきです。

どうしようかと悩んでいます。配線の引き直しは面倒です。でも今は夏場にさしかかりつつある時期なので充電の受け入れ性能は上がっているはずです。15.0Vは少しだけ高い気がします。とりあえず単体で14.2V。装着時に14.4V。ライトONで14.7V程度に調整し直した方が良いかもしれません。


配線の見直しは当分先になりそうなので、やっぱりレギュレータ単体の電圧を下げました。単体で14.2V。ライトOFFで14.4V。ライトONで14.6Vといった感じです。

実際の作業としてはR3の値を150Ωから120Ωに変更して対応しています。オシロで詳細の確認はしていませんが、テスターレベルでは±0.1Vの範囲で制御できています。チリル式と比べると劇的な改善です。


以下2006年09月09日追記
秋月に別の注文が有ったので、ついでに定損失のPch-FETを頼みました。オン抵抗が0.028Ωしかない2SJ554です。これまで使っていたのは手持ちの2SJ113でオン抵抗が0.25Ω有りました。わざわざ取り寄せる程では無いので放っておきましたが、良いタイミングなのでさらなる低損失化を目指して改良してみました。

2SJ113では、フィールドコイルの抵抗=5Ωと合わせて5.25Ωが全抵抗となります。電流はI=E/R=14.5/5.25=2.76Aです。新しい2SJ554では全抵抗=5.028ΩなのでI=E/R=14.5/5.028=2.88Aです。

フォールドコイルを流れる電流が約4%電流が増加します。磁束は電流に比例すると考えると磁束も4%のアップです。発電量に関しても最大で4%くらいアップしたらいいなぁ・・・と考えておくことにします。

ついでなのでフライホイールダイオードも交換します。従来は3A時にVf=1.2Vくらい有る汎用品を使っていましたが、今度はショットキーのD83-004を使いました。これだとVf=0.4Vくらいで済みます。FETがオフの還流期間も少しは効率が上がることになります。


ここには新しいレギュレータの回路図があります。

新しい回路図です。上記以外にも少し弄ってみました。

2SA1015のベースに抵抗を入れました。これは他のバッテリーや充電器を繋いで過電圧で飽和しているようなとき、ベースに抵抗が無いのは気持ちが悪いなと感じたためです。あまり実利は無いような気もします。

GX250でやったスイッチング速度の調整はやめました。代わりに一般的なゲート抵抗を入れています。今回は低損失を目標にFETを交換しましたが、スイッチング速度に関しては2SJ554の方が相当遅くなっています。特に逆起電力に影響する下降時間に関しては3倍以上遅いです。以前より緩いスイッチングになると言うことです。

それに加えてフライホイールダイオードには逆回復時間の短いショットキータイプを使いました。FETがオフの瞬間のヒゲみたいな逆起電圧はだいぶ少ないでしょう・・・たぶん。カンジニアリングでこんなもんで良いんじゃ無かろうか??という、いい加減なモディファイです(笑)。

耐圧に関しては2SJ113の-100Vに対して2SJ554は-60Vとスペックダウンです。最近は実用的に使っている事もあって、壊れるのが怖くなってきました。そのために手持ちの16Vツェナーを直列にして32V仕様にしてクランプさせています。

おまけでゲートにも±16Vのクランプを追加しています。


良い感じで動いています。FETやダイオードの発熱が明らかに減りました。始動直後の1,000rpmでもバッテリー電圧は14.5V程度有ります。以前は1,200rpmくらいからコントロール範囲に入って居ましたから、はっきりと能力が向上しています。

さすがにライトオンではアイドリングで14Vを下回りますが、1,300rpmも回せばコントロール範囲に入るのでかなり安心できます。あとは灯火類の省電力化を検討する領域に入ったような感じです。

もう一つ宿題が出てきました。現在の回路ではツェナーの温度係数が一番効いていて、気温が高いと充電電圧が高くなります。気温が低いと充電電圧も低くなります。これはバッテリーの充電受け入れ性能を考慮すると逆の特性です。

サーミスタを追加するとか、他の部品の温度係数を上手に組み合わせるなどして、理想の電圧特性に持って行きたいところです。0.1-0.2V程度の話なのでどうでも良いのですが、気になりだしたら気になってしまいます(笑)。


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