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馬屋(まや)の基礎

古い馬屋(まや)の中を自転車置き場にしようと思い、倉の中から使っていない雨戸を引っ張り出してきました。これを入り口に取り付けようと柱を弄り始めるとなんか変。

廻りをほじってみると「ガーン」

ここには腐った基礎の画像があります。

120mm角の柱の下には同じくらいの土台となる木が渡してあります。これの3/4位は腐ってしまい、手でほじっただけで崩れ落ちてしまいました。

既に柱は若干沈んでいるようで、道具箱の裏になっていた反対側のモルタル壁は圧縮されてひびだらけです。

さてさてどうしましょう・・・と言うのがここまで。私は古民家レストアマニアじゃ無いので(笑)、「またまた仕事が増えちゃったよぉ〜」なんて喜んだりしません。本気で困ってしまいました。


どう考えてもこのままじゃ危ないので、両側をジャッキで支え直して土台の木や廻りの壁や土を撤去し、作戦を練ることにしました。

両側の梁をジャッキで支えただけでは圧縮された土台が抜けなかったので、腐って無くなった部分にM24のボルトで簡易的な豆ジャッキを作って柱を持ち上げました。隙間が出来て土台が動くようになったので、適当な位置を鋸で切って取り出します。

ここには周囲を撤去後の柱の画像があります。

取り出した後にもM24のボルトを追加し、合計3本で柱を支えています。柱の許容応力を10N/mm^2とすれば、この柱には10x120x120=144kNの圧縮力がかかっている可能性があります。

M24の有効断面積を338mm^2とすれば圧縮応力は144000/338/3=142N/mm^2となり圧縮応力的には十分です。ボルトの頭が当たっている部分の面圧の方が厳しそうです。両側のジャッキもあることだし、地震でも来ない限り直ぐに潰れることはなかろうとほっと一息。


ここでオリジナルの構造や原因を整理しておこうと思います。

梁を支える主要な柱は横たわった土台となる木の上に立っています。土台の下は基礎があり基礎の構造は上に柱があるなしで異なっています。

上に柱がある部分の基礎は400mm角程度の玉石で受けています。玉石と玉石の間は煉瓦です。煉瓦は少なくとも250mm以上は積み重ねてあります。

玉石と煉瓦の上面はツライチとなっており、漆喰?と思われる白い物で凹凸を吸収した上で土台の木が乗っています。ボルトなどによる固定はされていません。(下図)

ここにはオリジナルの基礎構造があります。

引き戸があるところはこの土台の木に直接溝を切ったり、木の横にレール的な木材を追加して引き戸の敷居となっています。

小さな頃の記憶では、土台の木が地面よりもかなり出ていました。稲家や馬屋にはいるときは木を跨いで入った記憶があります。と言うことは玉石や煉瓦が100mmくらいは地表から出ていたと思われます。当然土台の木材も地表から100-200mmの位置に成ります。

ところが現時点では表にコンクリートの犬走りが追加されており、室内もコンクリートが流してあります。犬走りの上面は土台の木の下面です。これでもどうかなと思うのですが室内のコンクリートは土台の木を覆っています。

室内のコンクリートの厚みは20mmくらいしか無く、土台の木の下の方は土に接しています。別の言い方をすれば木を地面に埋めて、表面をコンクリートで密閉してあるわけです。

ここには改装後の基礎画像があります。

うーーん。オヤジが自分でやったにしては面積が有りすぎるので、どこかの左官屋に頼んだのでしょうか。その際に土台の腐朽などは考慮せずにコンクリを流してしまったのでしょう。


犬走りも室内のコンクリも有るのが前提で使っていますので、今更昔の土の状態に戻すわけにはいきません。範囲も広すぎます・・・

と言うことで腐った土台をコンクリで置き換え、柱などの木材を地表から極力離す方向で修理をすることにします。できることなら強度もオリジナルより落ちることなく。

本来なら隣の柱の下も同じように腐った土台を撤去し、鉄筋を入れたコンクリートでスラブを作ってしまうのが良さそうな気がします。しかしジャッキの数や工事の規模を考えると現実的ではありません。

と言うことで、とりあえず柱の下だけにコンクリートを流して、玉石と一体化した沓石を置いたようなイメージにすることにしました。幸いにも柱のほぞは生きているので、このままコンクリを流せば穴の開いた沓石にしっかりと組み合わさった感じになります。

コンクリートの許容圧縮応力は杉や桧の繊維方向と同等程度はあるはずなので、柱をそのままの面積で受けてもOKなはずです。一応M24のボルトは残しておくつもり(今更とれない・・・)なので、自作沓石の圧縮応力は大丈夫でしょう。

心配なのはM24のボルトがメッキ品なのと、上面と下面が露出しておりコンクリートが被っていないことです。

このやり方では、土台の木による左右の柱間のつながりは無くなってしまいます。この件に関しては悪い柱を全て対策した後に、沓石の上の部分で新たに柱と柱を繋いでやろうと思います。

ここにはコンクリート施工中の画像があります。

と言うことで、型枠を組んでコンクリートを流しました。丁度右肩を負傷して腕が巧く動かないので、コンクリを練るのは息子にやらせました。他人にやらせる人間コンクリートミキサーは楽です(笑)。


ナフコの袋をかぶせて適当に養生して数日置きました。型枠を外すと下の隅の方に少しだけ巣が出来ています。小さいし素人工事なので許容範囲とは思いましたが、外から見えたら格好悪いのでモルタルで誤魔化します。

ここには完成後の基礎画像があります。

モルタルを塗った後はこんな感じ。素人左官の仕事はうーーん・・・と言う出来ばえで、多少の巣が見えてもコンクリート打ちっ放しの面の方が良かったかも(笑)。

とりあえず柱の垂直加重に関しては修理が出来ました。あとは隣の柱の下と、柱同士の接続をどのように処理するかです。結構面倒な内容なので正月を越しそうな感じです。先に自転車置き場の扉を作ってしまおうと思います。


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