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皆生トライアスロン(大会当日)

いよいよ当日の朝。4時に起きて前日に用意した朝食を食べる。腹が下がってないので食欲が無い。でも食べておかないとエネルギー切れになりそうだったので、おにぎりを2個だけ缶コーヒーで流し込んだ。

トイレに行ったけどやっぱり出ない。ウォシュレットでジャワジャワと尻の穴に刺激を与えてみたけどダメ。もう今日は諦めた。時間も来たので集合場所の駐車場に向かう。

駐車場には参加する選手にプラスして、ウエキさんご夫妻や応援団が揃ってきた。いつも見てきた顔ぶれを見ているとほとんど緊張しない。

早く来たつもりなのに結構時間は無く、バイクをラックにセットしたり、トランジットバッグを持って行ったり、ウェットスーツと水泳道具を用意したりしていたら丁度良いくらいだった。

受付をしてアンクルバンドを貰い、体育館でウェットスーツに着替えていると忘れ物に気が付いた。昨日の夜バイクパンツのパッドにワセリンを塗って、そのあと瓶をホテルに置いてきてしまったことを。過去にプールで試したときは問題無かったので、このときは気にせずにいた。

堤防をぞろぞろ歩いてスタート地点である河口に移動。ちょこっとだけ水に入ってみるとプカプカ良く浮く(^^)。よしよしこの調子。これなら俺でも溺れずに済むと安心した。エミリーが居たので少し話した。スイムが得意なマットは前の方にいるらしい。

1分くらい後でスタートしようと後ろの方に陣取った。近くにはなおチャン鬼嫁の姿も見える。招待選手である田川さんも近くにいるけど、招待選手がこんな所からスタートしていいの?

とかなんとか思っているとスタートになった。稚魚の放流みたいな景色を後ろから眺めながら、1分くらいしたのでおもむろに水に入った。とは言ってもまだまだ人は多い。


壮絶なバトルにはほど遠いけど、最初は何回も人と当たる。ヘッドアップも何も関係なく、とにかく群れの中で泳いでいると350mの旋回点に来た感じ。

その頃左の胸を結構激しく蹴られて一瞬「ウッ」となる。結構痛い。体が触れたらバタ足を止めて平泳ぎみたいにひたすらキックする人らしい。たまらんので横に離れる。

海岸と平行に泳ぐ部分になったら少し泳ぎやすくなった。ゆったりと泳いでいるので全く苦しくない。でもコースが滅茶苦茶で自分でも情け無くなる。

無意識で泳ぐとどんどん左にそれてしまい、警備のカヌーが直ぐ横にいる。こりゃいかんと思って右向きに泳ぎ始めるけど、しばらくするとまたカヌーが見えてくる。これの繰り返しで何とか折り返し点のアドバルーンが見えてきた。

このあたりから首の後ろが猛烈に痛くなってきた。ワセリンを塗らなかったのでウェットのゴムが首の皮膚をこすり取っているわけだ。しかも想定外の凄く上の位置。ヘッドアップして首を回すので髪の生え際に近い部分までこすれている。これは次回のワセリン塗布位置の参考になる。

折り返し地点で一旦上陸しチェックを受ける。時間は解らなかったけど前にも後ろにも人が一杯居たので安心した。スポーツドリンクを1杯飲んで再び水に入る。

帰りは行きよりももっと楽。廻りが同じくらいのペースなので変な混雑がない。ちょっと余裕が出来たので泳ぎ方を色々試してみる。グライドを意識するとやっぱり速い。廻りの選手が少しずつ後退していく。

先週のプールで試したとおり、今日のスイムでは脚はほとんど動かしていない。本当のOWSでは無いとは思うけど、ウェットが許可されたルール上で戦う競技な訳だから、そのルール内で自分が一番有利な戦い方をするべきと思う。だからキック練習はしたけど本番ではキック無しで泳ぐことにした。ただ、こんな事やってるヤツはハワイには行けないけどね(笑)。

最後の旋回点を回ってゴールに向かって泳ぎ始めた。もう時間内の完泳は確信したのでリラックスしている。最後の方になって何回か蛇行し、他の選手の脚に絡んだ。ちらっと見えたキャップがピンクだったので女子選手らしい。申し訳ないと思ったけどどうすることもできん。

最後はトランジットに向けて心拍を下げておこうと思い、ゆっくりとしてから上陸した。上陸したらタイムが1時間10分を示していたのでびっくり。3kmの自己ベストだ。

上だけ脱いでシャワーに行くと楠さんが居た。ありゃ・・・さっきのピンクキャップは楠さんだったのか。脚を触ってごめんなさいと後で謝っておこうと思った。と同時に、元実業団選手の脚を触った訳だからランで何か御利益があるかも・・・等とアホな事を思う。

スイムの公式タイム 1時間10分35秒


バイク用のバッグを取って更衣室に入る。Forerunner301用の胸バンドを忘れずに付けて準備完了。再度バッグを掛けに行ってバイクの元に行く。ここで初めてForerunner301の電源を入れた。スタートまでにきちんと測位してくれるだろうか・・・

乗車ラインまで押していったけどまだ測位していない。仕方ないのでスタートボタンを押して計測をスタートさせてバイクに乗り込む。数回漕いだどころで測位して速度を表示しだした。良かった。今回の大会はGPSの試験の意味合いもあるわけだから「測位してませんでした」では話にならない。

今回のバイクは軽く160拍キープくらいで行こうと決めていた。でも最初は170位でちょっと高い感じ。平地だしそんなにスピードを出していないのに何でだろう。スイムの後だからだろうか。ちょっと抑え気味で165位にして走る。それでもだいたい廻りと同じくらいの感じ。

しばらく走ってからルートを入力していたことを思い出し、ルートナビゲーションを開始させた。これで消費電力が少しは増えるのだろうか?少なくとも減る可能性は無さそうなので、実験的にはONにしておくべきかと思った。

最初の1-2時間の間は補給も旨く行っていると思っていた。薄皮あんパンを4個食べて、ボトルに入れた普通濃度のポカリスウェットを1時間に1.5Lくらい飲んだ。このころまでは順調と感じていた。

ところがその後なんとなく調子が上がらない。負荷はきつくないのでハアハアは言わないけれど、心拍を維持しようとするといつもよりはずっと遅い速度になったり、ずっと軽いギヤを選んでいたりする。

ずっと乗ってないからなぁ。。。と諦めつつもチンタラ走っているとなおチャンが居た。レース前にはションベン臭い小娘なんかに負ける訳無いわ・・・なんて思っていたけど、心拍を一定で走っていると登りでは置いて行かれてしまった(笑)。

このままじゃブログに何書かれるか解らんので、少し心拍上げて追い越そうとも思った。でも初のロングレースだしなんか調子が変と感じ始めていた頃なので、無理をせずに登りでは先に行かせる事にした。幸いにも緩い下りでは彼女は漕がないのか休んでいるのかスピードが落ちるので、一定パワーで漕いでいる私が追い越すことが出来た。

とは言ってもなんか調子が変。水を飲んでも汗がだらだら出るわけでも無いし、かといって喉が強烈に渇いているわけでも無い。薄皮パンや干しイチジクも食べることが出来るので胃は大丈夫みたい。何なんだろう。

そうこうしているとどうも小便が我慢出来なくなり、エイドで用を足した。しばらくするとまた行きたくなり、次の次?くらいでまたもや用を足した。こんなに暑くなってきたのに何故だろう。

やっぱり俺って遅いよな、とか思って漕いでいると今度は大腿四頭筋の内側が攣りだした。左右同時に。止まるわけにもいかんので、尻の筋肉で漕ぐようにして大腿四頭筋を休ませてみる。

コースも最後の方になってきたら上半身が疲れてきた。腰をカバーするような姿勢になっているのか、いつもよりも肩や背中が痛い。最後の土手では我慢が出来ずにハンドルの直線部分を持ってツーリングみたいになってしまった。速度は25km/hしか出てない・・・

かるーくランに繋ぐつもりのバイクだったけど、速度が遅いだけで肉体的には何も軽くなかった。しかも乗り込んで無いだけの不調とはちょっと違う様な違和感を感じ始めていた。こんな状態でランへ突入。

バイクの公式タイム 5時間41分48秒


バイクが終わるとラン用のバッグを持って再度更衣室へ。結局ランシャツで走ることにしたので、ジェルや干しイチジクを入れた小さなウエストバッグも装着する。念のために靴下も履き替える。

更衣室で着替えると直ぐに5分は経過する。タイムを気にするならスイムの段階からそれなりのウエアを着ておき、ウエットを脱ぐだけでOKの体勢を整えておくべきかもしれない。たとえ似非アスリートであっても、稼げるタイムは稼いだ方が楽になれるはず。

着替えが終わってForerunner301も腕に装着しなおして出発。バイクからランへモードを切り替え、スタートラインで計測を開始する。Ver3.00なのでマルチスポーツモードが搭載されており、バイクから通しの時間も解るようになっている。今の私にとってあまり意味は無いけど。

ランが始まって直ぐが一番厳しかった。キロ6分を切るくらいなのに心拍は180近くまで上がる。腹が張った感じがして喉の渇きは無い。もうリタイヤしようかとか色々弱気な事も考えて走っていたらエイドがあった。

目の前に塩を振ったスイカが有ったのでこれをかじる。なんか美味い。続けざまに塩を付けてガンガンかじる。思えば昨日から甘い物ばかり摂取してきた気がする。いつもの夏なら、ドリンクは薄めたポカリに塩とクエン酸を入れて自作していた。今回はポカリそのものを2Lも飲んだ。。。

急に塩が足らんのじゃ無かろうかと思いだし、次のエイドでも塩振りのスイカを食べて水も飲んだ。すると面白いように走れるようになってキロ5分30秒くらいが維持できるようになった。しかも心拍も下がっている。なんか急に嬉しくなってきてそのまま15km地点くらいまではどんどん前を行く選手を拾っていった。

15kmあたりで白石さんと前後して走ることになった。初めは調子が良かったけれど、今度は急に尿意を催してきた。それも強烈なヤツでエイドまで我慢できない。

丁度横が林だったので、林の中で立ちションをした。白石さんよりも私の方が少しペースが速かったけど、立ちションをしたらほぼ同じ位置に並んでしまう。次のエイドでもトイレに行った。なんか別の意味で変になった感じ。

エイドでは相変わらず塩振りスイカと水を飲み、後ろのトイレで用を足して出発するのの繰り返し。しかもエイドによっては走り出して20-30mも走るとトイレに行きたくなるようなおかしさ。我慢できずにエイドの間で立ちションしたりもした。

もう俺の腎臓と膀胱は壊れてしまったんじゃ無いかと思い始めて、速く走る気分など吹き飛んでしまった。でもリタイヤする気にはならなかったので、トイレを探して前に進んだ。

25km地点で楠さんが後ろから追い越していった。もの凄い走りで廻りの選手とは速度差が1.5倍くらい有る。前を行く選手を手で払いのけるような感じでどんどん前に進む。流石にちょっと前まで実業団選手は違う。交差点にいたボランティアが「スゲェ」と叫んだ。

31km地点で前方に歩いている鬼嫁を発見。声をかけたら走り始めたのでしばらく一緒に走る。でも私の方がペースが速いので段々差が開いていき、エイドで小便をしている間に追いつかれるという繰り返しで最後の街中まで来てしまった。

もう順位もタイムもどうでも良くなっていたけど、彼女に負けるのは悔しかったので最後のエイドではトイレを我慢した。そのまま走っていると信号停止。そして彼女が追いつく。走り出すと信号停止、そして彼女が追いつく、最後の最後でこれの繰り返しが何回かあり、これも何かの縁なので一緒に行こうかと思い出した。

前田のオッサンは普段ギャアギャアうるさくて出たがりのくせに、嫁さんが帰ってきても「結構速いジャン」とか声をかけてお終いにしそうな気がした。ゴール前になって彼の姿が見えたら引っ張り出して、夫婦で一緒にゴールさせようと思った。

最後の直線まで来たので「そろそろ出てくるよ」等と彼女に話したら、「あの人はゴールにしか居ないでしょ」とのお返事。まあそうかもしれない。実際に直線路では姿が見あたらなかった。そして結局ゴールの所にも彼は居なかった。

若い独身女性ならともかく(笑)、よその嫁さんとゴールすることになってしまいちょっととまどう。でもいまさら止まったり脇にそれたりする余裕もなかったので、そのままゴールした。

ランの公式タイム 4時間43分06秒、 トータル 11時間35分29秒


ゴールの後ろにもダンナの姿は見えず、鬼嫁の顔が少しだけ険しくなった様な気がした。何としても早くダンナを見つけないといけない悪い予感がしてあたりを見回す。彼の性格を考えると、嫁さんのゴールタイムが予想できていても、どこかの大学生にペダリングをレクチャーするのに夢中になっているはずだ。

きょろきょろしていると食べ物テントの方から前田のオッサンが出てきた。彼が「早かったね。。。」等と言いながら近寄ってくると、鬼嫁はいきなり手に持ったコップの水をぶっかけた。怖くなった私はこの場を離れたのでこの後の修羅場は知らない。


なんだかんだでレースは終わった。体も胃もあまり消耗していなかったので、先にゴールしていた永田さんと話したり、無料のラーメンやハンバーグを食べたりした。同じくらいの時間動いていたのに、玄海100kmの時はもっともっと脚も胃も消耗していた。ゴール後に自力でしゃがむことも出来なかった。

ラーメンを食べながら考えたけど、ミネラルバランスが崩れてしまったのでは無いだろうか。少しの崩れや収束する崩れなら良かったけど、私の補給のやり方などが悪い方向に行ってしまい、全てが悪い方に発散してしまったような気がする。

まあ、こういうのも含めて選手の力と言うわけだから、今の私の力はこの程度と言うことだ。家に帰ってからもう少し詳細に分析して、次の対策を考えないといけない。弱くても良いけど進歩が無いのは面白くない。

ちょっと落ち着いたのでゴールを見に行った。岸田さんと勝島さんが居たので聞いたら、なおチャンが20分くらいでゴールするらしい。他の人は既にゴールしているので、ゴールシーンを見ることが出来るのはなおチャンだけだ。

直線路の先の方に陣取っていると、薄暗くなった道をなおチャンが帰ってきた。脚がかなり痛そうでフォームがひどい。痛々しいけどなんかいい感じ。精一杯声援して拍手した。

その後みんなで記念撮影したりしてから撤収した。撤収間際にゴールしている人は、広島のサタ陸で一緒になった人だ。名前が解らないけど、いつもサタ陸が終わってからプールに行くと言っていた人。自転車を押していたので声だけかけた。

ホテルに帰ってから一人になるとホッとした。色々あったけどやっぱり嬉しい。こういう事が出来る環境と体を与えてくれた神様に感謝した。嫁さんに電話したらインターネットでライブ更新されていたらしく全て知っていた。阿蘇望に行けなかった息子達も見ていたそうで、リタイヤしなくて本当に良かったと思った。

チーズ蒲鉾を食べていたら変な臭いがしてきた。濡れたウエアや靴が異臭を放ち始めていた。じゃまくさかったけど杉山の事を思い出して、夕食に出る前に全部洗って干した。だれも誉めてくれないので、一人で俺ってちょっと偉いなと思った(笑)。

22時過ぎから皆で近くの店に行き、軽く晩飯を食べた。参加選手も応援に来てくれた人達も、それぞれに満足げないい顔をしていた。その後ホテルに帰って直ぐに寝た。


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