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低レベルGPS同期カウンタの製作 (基礎実験編)

以前ジャンクコーナーで販売したGPSユニット。PHSかポケベルの基地局を撤去した時に多量に出た品物で、時刻同期用のGT-74をベースにした元々は相当高価な代物でした。

解る人には解るというわけで一気に売り切れてしまいましたが、自分用に1個だけ残していました。その1PPS波形をぼーっと眺めていてふと思いつきました。そうだ、周波数カウンタに突っ込もうと。

SA無しの測位中であれば、この1PPS信号の立ち上がりはUTCに対して±1μs以内が保証されています。これをトグルFFで1s幅のパルスにしてやれば、パルス幅は最悪でも±2μsの精度が保証されます。良く見る精度表記なら±2ppmとか±2x10^-6相当です。暑くても寒くても起動直後でも何年も校正しなくても、測位さえしていれば。

さらにこいつの凄いところは常に絶対時刻に対して±1μsの精度を維持しているので、10秒のゲートタイムでも±2μsのパルス幅精度。100秒のゲートタイムでも±2μsのパルス幅精度・・・となるところです。すなわち10秒なら±2x10^-7、100秒なら±2x10^-8、1000秒待てば±2x10^-9となってしまいます!!計算上は。。。


とりあえず実際に試す事にします。むかしソーラーボートのモータ試験用に作ったTC5053Pを使った4桁カウンタが有ったので、これのクロックとしてGPSの1PPSを利用する事にしました。

このカウンタは4桁しか有りませんが、TC5053Pは4MHzまでカウント出来ますから、キンセキのEXO-3試験用基板の3MHz(3000000Hz)を測定させて下の4桁のみを観察します。

下の写真で中央がカウンタ基板、上が表示部、下がGPSのI/F基板、右がGT-74、左がEXO-3基板です。
ここにはGPSとカウンタ基板の画像があります。
4桁の表示は9967か9968で安定していました。これは2999967Hzを意味します。この場合1PPS起因の誤差が最大で±6Hz有りますので、現時点でのEXO-3の精度は-9x10^-6から-13x10^-6の間だと言うことが解ります。


同じ信号を私のイカス(笑)カウンタで測定した結果がこの画像です。こちらも1Hzの単位を見るためにあえてオーバーフローさせて1秒のゲートタイムを選択しています。
ここにはカウンタの画像があります。
このカウンタではEXO-3の周波数が2999965Hzと言うことになります。このカウンタの基準クロックにはエプソンのSPG8651Bが使われています。この発信器は工場出荷段階で±5x10^-6がスペックです。GPSの1PPSを正とすると、このSPG8651Bはすこし周波数が高いのかもしれません。

この段階で驚いたのは、どの表示も結構安定していることです。1PPSや水晶発振器の周波数が許容精度の範囲内で毎回ふらふらしていたら、それらの複合的な産物である周波数表示はかなり変動するはずです。しかし数秒から数十秒に1回程度、±1の変化があるだけでした。

これかの結果から1PPS出力も水晶発振器の出力も、変化しているとしても非常にゆっくりとした変化だと思われます。と言うことは1PPSの隣り合ったふたつのパルス幅の精度は、10^-6では無くて10^-7とかもっと良いところまで行っている可能性がある訳です。


ウヒヒとか思いながら、最後にオシロで周波数を確認してみました。ジャンクを修理して今やメインとなってしまった古いHPのオシロ、垂直軸は校正直後のマルチメータを使って検証しましたが、水平軸は未確認です。同じパルスをこのオシロで読んで検証してみるわけです。
ここにはオシロの画面があります。
こいつの周波数はパルス周期の逆数として計算されているようで、波形の揺れで最大と最小の値はある程度幅が出ます。平均周波数を見ると2999900Hzとなっています。GPSカウンタの2999967Hzを正とすれば、このオシロの内部発信器は22x10^-6の精度と言うことになります。デジタル処理の分解能などを考慮するとOKと判断出来そうです。
この段階では精度的にTCXOと大差有りません。しかし十分ハッタリの効く構成です。「恒温槽」とか「バリキャップ」とか「補正」と言う言葉よりも「GPS」とか「原子時計」とか「同期」といった言葉の方が、素人は単純に、玄人は勝手に別の機器を想像して感心してくれるでしょう(笑)。

次は74390で10sと100sを作って高精度に挑戦だ!と勢いづいていましたが、どこを漁っても10進カウンタが出てこないために本日の実験はこれにて終了となりました。


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