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eTrex系の長期間の加振による電源断対策

掲示板でeTrex系の電源断問題が出てきました。時を同じくしてハブダイナモの実走行試験でも電源断に関係するトラブルが出てきました。今までeTrex系の電源断はあまり話題にならなかったので、今回検証してみました。

掲示板の話題では、ロードレーサーに純正マウントでeTrexを取り付けて走ると、電源断が発生すると言う事です。RAMマウントにしてもらいましたが、それだけでは改善できませんでした。弊社の場合はハブダイナモでの試験中に100kmほど走ったタイミングで、ハブダイナモの供給電圧が下がると電源が落ちてしまう事例が発生しました。

いずれも電池ケース内の接触不良と思われ、対策を考えてみました。掲示板の方は電池ケースの隙間にティッシュを詰めてもらうと解決しました。弊社でも電池ケース内に厚さ1mmのスポンジラバーの小さな短冊を貼り付けて走ってみました。

ガタ対策を施したeTrexでは、ハブダイナモの電源供給が無くなっても電源断になりません。ちゃんと電池ケースから電源が供給されて居ます。対策は成功です。ロードレーサーで走行中の電源断は電池のガタを取ることで解決しました。


ところが、自転車からeTrexを降ろしてチェックしてみると、少しおかしいことが起こっています。MENU画面で電池のレベルが下がっているのです。出発前にはフルのレベルでした。走行中はほとんど電池を消耗していませんから、本来なら走行後もフルのはずです。

電池ケース内で電池を、指先でゴロゴロと転がすようにしてやるとグラフが元に戻ります。これは電池と電極の間に不導体の不純物が生成されて居る可能性が有ります。電源断にまではならないまでも、不導体による接触抵抗によって液晶の電池レベルが下がって居たのでしょう。

この不導体は何なのか、どうやって生成されるのかは大学の研究室に任せることにして、販売店のオヤジとしては実用的な対策を講じないといけません・・・・

大気中の酸素による酸化物で有っても、ある種のガスとの反応で有っても、スパークによる生成物であっても、摩擦による金属粉であっても、接触面が油でじゅくじゅくに濡れていれば状況が変わるのではないでしょうか?


そう考えて油を塗ることにしました。ただし周りにはプラスチックが有りますから、プラスチックに無害な油でないといけません。以前GPS2+の電極ピンの腐食の時に、横田さんに紹介して頂いた「タミヤの接点グリス」を思い出しました。

これはRCカーの抵抗線型スピードコントローラに塗るものですが、メーカーの生い立ちや使用される環境からプラスチックに対する攻撃性は低いと思われます。実例としてGPS2+やGPS12に2年以上も使っていますが、周りのプラスチックに割れやひびは発生していません。

と言うことで、eTrex系のプラスチックには実績が有りませんが、早速電池の両端に接点グリスを塗ってケース内に装着。息子と息子の友人を誘って自転車屋を回ったり、ヒルクライムの練習をしたりと走り回って来ました。

途中で電源断は一度も有りません。帰ってから電池駆動に切り替えて電圧を確認するとフルのままです!一応成功です。このまましばらく使ってみることにしました。

とは言っても完全な対策では有りません。毎回電池に接点グリスを塗るのは面倒です。でも考えてみてください。マラソンの前には足の指にワセリンを塗ったり乳首に絆創膏張ったりします。自転車のタイヤにも空気を入れたりホイールのふれをチェックしたりします。eTrexにも同じような対策を施してやるのも良いかも知れません(と、言い訳モード)。


2007年06月01日加筆

上記の文章を公開したのは2002年の5月でした。その後のeTrex系の電極形状には色々と変化がありましたが、最終的には標準でかなりのレベルまで改善されています。電池の脱着がかなり硬くなりましたが・・・。

しかし機械物に完全は有りません。新しいモデルでも電源が切れる場合は上記の対策を参考に色々と工夫をしてみてください。


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